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観劇、LIVE覚書

ブロードウェイミュージカル アイランド〜かつてこの島で〜  20140615

ブロードウェイミュージカル アイランド〜かつてこの島で〜
ONCE ON THIS ISLAND

六行会ホール
2014.06.10〜15
脚本/作詞 Lynn Ahrens
作曲 Stephen Flashrty
演出 中本吉成
翻訳 吉田英美
訳詞 芝田未希
企画/制作/主催 ミュージカル座


カリブ海に浮かぶとある島。
この島では、神々に祈りを捧げながら日々働く農民たちペザントと、優雅にパーティを楽しむ富裕層グランデが暮らしていた。
ある日、農民の娘ティ・モーンは交通事故で怪我をした青年ダニエルを助ける。
やがて二人は恋に落ちるが、ダニエルは農民たちと敵対するボゾーム家の息子だった。
しかもダニエルには婚約者がおり・・・。
リビアンミュージックに乗せて描かれる身分違いの恋物語


以下、いつも通りの私的感想です。

どうしてか、今回やたら緊張してました。私・・・
5月が激動すぎて、ほんと、一年ぶりに龍ちゃんを観る感覚だった(笑)

さて。人魚姫とロミオとジュリエットからインスピレーションを得たというこのお話。
龍ちゃん達、神ファミリーの存在以外は実に人間くさく、リアリティ溢れる内容でした。
とりあえず、聖太さんは大丈夫だろうかと心配してしまうくらい(笑)
しあわせの詩といい、何故かあまり好きでないタイプの役をやられている時に観るなぁ。ラブミュで好青年ぶりを発揮してくださっていたので悪い印象はありませんが、見た目好青年なだけに殴ってやりたい感が増しますね←
主演の片山さんは女性キャストと並んでも際立つほど小柄でびっくり!
でもその小さな体をいっぱい使って跳ねたり駆けたり踊ったり。全身でティ・モーンを演じてました。
歌はもうちょっと感情がのればいいのになって思うところがあったけど、ハリのある声にこれからどんどん進化していく予感と期待。
生放送やカテコの挨拶の時の脅えきった小動物のような片山さんと、舞台上の元気な南国少女ティ・モーンのギャップが微笑ましくて、ファンの方が彼女を応援したくなる気持ちがちょっとわかりました。
神チームは其々個性溢れて、大地の神アサカは母、水の神アグリーは父、愛の神エルズリー姉、死の悪魔パパ・ゲーは弟って感じでチームというよりファミリーに見えてしまった。
特に、ティモーンに関して神々が話し合う(というほど大袈裟でなく、あれただの雑談だよね)場面では、愛の女神エルズリーの言葉に聞いてられないとばかりに顔をしかめたり、耳をほじったり。とにかく態度の悪いパパ・ゲーが反抗期の弟に見えました。
ちょうど年齢的にもそれくらいの差があったと思うんだけど・・・アサカ役の鈴木さんに失礼かしら。
衣装も其々神の特質を現す色や装飾で、民族衣装ぽいのがすごーく好み。
エルズリーは秋山さんのお顔立ちもあってとてもエキゾチックで美しかった。
パパ・ゲーはマントって聞いて、何故か王子様マントを想像していた私は袖つきのトートマント(と言えばミュージカルファンには通じると思ってる)にテンションあがりまくり。巻かれたい!命いくつとられてもいいから巻かれたい!←
艶やかな黒地に赤い模様が血のような、マグマのような。
歩くたびにふわーっと広がるのを手でさばいて動き回るのがほんっとに優雅で気品あふれてました。
マントの中は細身のレザースーツ?黒の衣装ほとんどマントに覆われていたんですが、龍ちゃんのスタイルのよさが活かされたデザインで素敵だった!
youtubeでチェックしたフィリピン版は呪術師のような出たちで言葉は分からないまでもおどろおどろしい印象だったけど、今公演のパパ・ゲーはスタイリッシュ悪魔で心のそこから演出さん衣装さんに感謝しました。いや、呪術師バージョンも観てみたかったけど(笑)
あと、やっぱり年齢ってあるのかなって事も感じた。
岡さんのパパ・ゲーは観てないけど、きっと全く違ったんだろうなと。
演じる人が違えば変わってくるのは当たり前だけど、龍ちゃんのパパ・ゲーは若さが良い感じで作用していて、先にも書いたけど、神ファミリーの末っ子ぽく表情豊かなのがとても良かった。
悪魔だけど恐いだけじゃなく、茶目っ気もあってかわいいっときゅんきゅんするところもたくさん。
特に、行商人(?)にもらった靴が小さくて困ってるティ・モーンに、「それを履け。それが代償だ」って言うシーン。
ぴょこっと隣にやってきたリトル・ティ・モーンの「いいよ!」ってかわいいお返事に、びっくりした後でれっと笑ってリトルのほっぺたぷにぷにってしたとこ!!!
幼女と死の悪魔の組み合わせまじやばくてこのシーン脳内リピート一万回ってくらい思い出してる!(きもちわるい)
ここ、「死の悪魔」ぽくなかったけど、どんな立ち位置だったんだろ。ティ・モーンにサイズの合わない靴を代償に履けって?
ダニエルの命を助けた代償はティ・モーンの命(愛を貫くだかなんだかって条件付)だしな〜。
グランデまでの旅を助けたアサカが言うなら分かるんですが、この辺ちょっとあいまいです。
だがしかし。パパ・ゲー龍ちゃんが最高にかわいかったからそれでいい。
そんな可愛い!って叫びそうな表情をするかと思えば、死の悪魔らしくティ・モーンを脅し、追い詰めるシーンでは冷ややかな表情にゾクゾク。
ダニエルの命を救うため、必死に看病するティ・モーンと、彼の命の変わりにお前の命を差し出せるのかと問い詰める場面。
セットの岩場の中に小さな部屋(くぼみ)があって、そこで演技をするんだけど、内側にもライトがあったのか影がなくて、幻影のように見えて最初、映像?って勘違い起こしてました。
薄暗い中、強いスポットに金髪が輝いていて、その効果もあったかも。
ここでは、ティ・モーンがすがる希望を嘲る傲慢な口調や表情が、神様達と話している時とは明らかに違っていて、ティ・モーンを軽んじているのがすごくよくわかったし、愛の女神との賭け(?)を楽しんでる雰囲気もあった。
ダニエルに裏切られた時が死の悪魔の本領発揮で、さあお前の命をよこせと片手でティ・モーンの首を絞め吊り上げるところは片山さんも龍ちゃんも迫真の演技でドキドキヒヤヒヤ。
龍ちゃんの手ってきれいだけど華奢だから、その指がティ・モーンの喉に食い込んで痛そうだった。
脅えるティ・モーンを追い詰めるギラギラした雰囲気もすごかったけど、ダニエルを殺せとティ・モーンを後ろから抱いて囁くところは美しすぎてゾッとした〜
まさしく悪魔の囁き・・・!
耳に唇を寄せてっていうか、もうあれ唇ついてたよね。
小柄な片山さんの脅えきった表情と凄みのある龍ちゃんの表情が隣に並ぶからダイレクトにこちらに恐怖と絶望が伝わってきて、息が止まってしまった。
パパ・ゲーの白い手がティ・モーンの手にナイフを握らせるところも、手の動きがすごくきれいで、だけど、じわじわとティ・モーンがパパ・ゲーに侵されていく恐怖があった。
表情だけでなく、囁き声なのに有無を言わさぬ力強さと凄みがあって、龍ちゃんの進化を実感。
この時、ティ・モーンを唆すパパ・ゲーと、愛の力で引きとめようとするエルズリーの歌が交差するんだけど、ティ・モーンに向けてるだけじゃなく、エルズリーに対抗している部分もあってほんとすごかった。
すごかったしか言えない語彙の残念さが悔やまれるけど、観ているこちらも二人の歌声に揺さぶられて大変だった。
あと、神達の末弟の(勝手にそう位置づけてるけど)放埓さと、死の悪魔の苛烈で冷酷な顔と、もう一つパパ・ゲーには別の顔があった。
これも驚きの一つ。
命を賭してダニエルへの愛を貫いた(これは疑問が残るのであとで触れます)ティ・モーンの魂は、エルズリーによってアグリーの元に渡り、その腕に包まれた後、パパ・ゲーが引き受け、アサカの元へ届けられ、大きな木へと転生される。
この時、ティ・モーンの魂を運ぶパパ・ゲーの静かで優しい表情に死の悪魔は魂の再生の神でもあるのかなとそんな事を想像した。
それくらい穏やかで温かな眼差しと表情だったし、ティ・モーンの魂を抱く腕に彼女への敬愛すら感じた。
もちろん、それは私が感じただけで色眼鏡なのかもしれないけど、素晴らしい役者さんだなって感動してしまった。
また、龍ちゃんがパパ・ゲーという悪魔をどう解釈し、掘り下げて演じたのか聞ける場があるといいな。
う〜〜〜〜これでまだ22才なんですよ!これからまだどんどん広がって行くであろう小野田龍之介の表現の世界が楽しみでならない!



パパ・ゲー感想はひとまずこれで締めて。
物語の内容にも少し触れておきたいと思うのですが、少し辛口になるかもしれません。
ティ・モーンの純粋な愛に感動し、涙した!という方は読まない方が無難かも(^_^;
申し訳ありませんが、ここらでウィンドウクローズかUターンをお願いします。
また、私が「こう感じた」というあくまで私的な意見であることと、演じている役者さん、演出などを批判卑下するものではないことをご理解ください。


えーと。まず、冒頭にも書いたんですが、かーなーり生々しい内容です。
人魚姫の王子様は隣国のお姫様が彼を助けたと勘違いし、声を持たず主張できない人魚姫を知らずのうちに裏切ってしまいましたが、ダニエルは彼の側に寄り添い、彼を支えたティ・モーンを分かった上で裏切りました。
ロミオとジュリエットは敵対する一族の壁を越え、結ばれようとしてその高潔な愛を、予期せぬ事とは言え死をもって完結させました。
ダニエルは、最初からティ・モーンと婚約者アンドレアを天秤にかけていました。
もうね、あのね、「グーで殴りたい」と何度思った事か・・・
途中でなんの前触れも無くグランデ一族の成り立ちが挟み込まれたのだけど、
フランスからやってきたボゾーム(ダニエルんち)の一族が、原住民の娘に手を出し、やがてハーフの子供が生まれ、白人でも黒人でもないその子供は父親をフランスに追い返してしまった。そしてその子の一族は永遠に島から出られない呪いをかけられ、その呪いを原住民のせいにして彼らを呪った。
て感じだったかな。もう、この時点で、なぜ原住民を呪った!?ってなりましたものね。
もっと複雑な話だったのかもしれないけど、物語自体が子供に読み聞かせをするように進んでいくので大人の事情なところは割愛!されている感が強かった。
その割にダニエルとティ・モーンの関係を噂する街の人々の言葉はかなり下世話だったけど。
そんな呪いを掛けられたボゾームんちのダニエルくんですから、最初からティ・モーンと結婚する気はさらさら無かったように思えます。
愛する人と結婚する人」と悩むかのように歌ってたけど、そう言いながら腹は決まってるんだろ?と穿った目で見てしまっていた。
パーティで婚約者から「優しさがあるなら全てを話なさい」って言われてもまだ戸惑うダニエルに、そりゃ彼女が開き直ってティ・モーンに真実を叩きつけるしかないよね。
言い方ってあると思うけど、その辺は女の世界なのかな〜と。
でもアンドレアが決して意地の悪い嫌な女ってわけじゃないと思うんだ。そうさせたのはダニエルだよね?
真実を知って打ち拉がれるティ・モーンに「結婚は出来ないけど、これからもずっと一緒にいられるよ」って言うのとか、とか、とか、ぐーでなぐらせろーーーーー!って気持ちが最高潮に高まった瞬間でした。
いや、違うな。最高潮はグランデの街から追い出されて二週間。
街の門前でダニエルを待って待って待ち続けたティ・モーンにコイン一枚握らせて立ち去ったときだ。
なんか、ダニエルのその行為にショックしかなかった。
確かにティ・モーンはパパ・ゲーの囁きに動かされて彼の命を奪おうとしたけど、結局出来なかったやん!しかもその原因作ったのお前だしな!
街から追い出されたティ・モーンが自ら「私はダニエルの愛人です!」って叫ぶのもいたたまれなかった。
小さなお家と大きな木と子供。ダニエルとの幸せな家庭を夢見て語っていた少女が自ら愛人を名乗るなんて。
人魚姫はいいよね、王子様に裏切られて命を奪えなかったら泡になって消えることができたんだもん。
ジュリエットはいいよね。例え目覚めてロミオが死んでしまっていたとしても、一緒に死ぬことを選べたんだもん。
でも現実は甘くないんだよって、このミュージカルはそう言ってる気がする。
夢見て、愛する人と結ばれて。裏切られた娘は捨てられて1人で息絶えるしかなかった。
例えそれが死の悪魔に愛が打ち勝った瞬間だとしても、崇高なものとは思えなかった。
なぜなら、彼女も、彼女を育んで愛してくれた人達を自分の夢のために裏切ったから。

ティ・モーンは大洪水の時にアグウェとアサカの気まぐれで生かされた女の子だった。
大きな木の上で泣いていた女の子をエルズリーの力もあって、引き取って育てることにしたトントンパパとママユーラリー。
2人がどれだけ愛情を注いだかはティ・モーンを見れば分かる。
でも、事故を起こしたダニエルを救おうと必死の娘のために、遠くグランデまで彼の家を探しに出かけた父親を、彼女はまったく気にかけなかった。
何日も何日も戻らない父親より、目の前で死にかけている自分の「夢」に必死だった。
戻らぬ夫と、何も食べず休まず、取り憑かれたようにダニエルを看病する娘を心配した母親の声もティ・モーンには届かなかった。
彼女はひたすら、ダニエルの命を救えれば自分はこの退屈な世界から抜け出せる。幸せになれると思い込んでいた。
パパ・ゲーと命の契約をしてしまうほど、娘は目の前の今にも絶えそうな命こそが自分の幸せの種と妄信していた。
ダニエルを看病する片山さんの鬼気迫る演技は素晴らしいものだったけど、だからこそ「何故?」という気持ちが消えなかった。
この時、少しでもティ・モーンが父親の心配をし、不安に駆られる母親を思いやったらもう少し彼女の愛や夢に寄り添うことが出来たかもしれない。
漸くダニエルの家を探し当て、ボゾームの家来(?)がダニエルを迎えに来た後、彼を失ったティ・モーンは抜け殻のようだった。
でも抜け殻になって終わらないアグレッシブすぎる行動力と、夢という原動力が彼女にはあった。
私が側にいないと彼が死んでしまう。をキャッチフレーズに、大地の神アサカに助けられながらダニエルのいるグランデを目指すティ・モーン。
神々の暇つぶしに踊らされていた気もするけど、ティ・モーン自身も「神様に洪水から助けられた特別な子供」という気持ちもあっただろう。
かくして、ダニエルの元にたどり着いたティ・モーンは彼と結ばれ一時の幸せを味わった後、裏切りに苦しみ捨てられるのだけど。
アグレッシブを貫いた彼女はそれだけでは終わらなかった。

息絶えた後、神々の手によって大きな木となった彼女はグランデの街の固く閉ざされた門を壊し。
そして、その木の下で出会ったグランデの男とレザントの女が心のままに結ばれ、とうとうティ・モーンの願い通り、二つの種族が一つになった。
大きな木に深い緑、白い花が咲きこぼれ、みんなが笑顔で迎えた終焉。
華々しいハッピーエンド。
けれど、私の胸に浮かんだのは「げにおそろしきは女の執念」という生々しい一言でした。
いや、それまで蔦が絡まっていただけの大木にぱーっと花が咲き、ティ・モーンの死を悼むようなくらい雰囲気から一気に華やいだ幸せの光景が広がったときは気持ちがよかったですよ?
ティ・モーン死んで終わりでなくて良かった−!って思いましたよ?
でもね、街を取り囲んでた壁や門を壊したり、その下で出会った二つの種族の男女をくっつけちゃったりって、愛の女神エリズリーの出番なくない?ってびっくりするわけですよ。
ちょっと切ない恋物語を想定していたので、フタを開けたらリアルすぎる!所々ファンタジーだけどリアルすぎる!って。

しかし色々書きましたが、面白かったのは確かです。
アンサンブルではなくストーリーテラーと呼ばれる人達が、子供に絵本を読むようにサクサク話を進めていくのだけど、これがかなりテンポ良くオモシロおかしく進んでいくから説明ぽくならないし、チャカポコ陽気な音楽が常にあるので明るく楽しい雰囲気が満載。
嵐のシーンやパパ・ゲーのターンでは暗く怖ろしげな雰囲気はありましたが、耳に残っているのはカリビアンミュージックの明るいリズム。
特に冒頭の島のあらましを聞かせる歌。
「パパ・ゲー死の悪魔〜」って一節がすごい耳から離れない。死の悪魔を紹介する調子でない明るさで、島の人達にとっては死の悪魔も自然の、神の1人で敬ってるんだなって。

休憩無しの90分というお尻に優しい(笑)上演時間に納めるために色々はしょったりもしたのかな。
もう少し、ティ・モーンとダニエルの気持ちが描かれていたら主人公二人のどちらかに心を添えることが出来たかしらとちょっと残念だったので、再演するときはその辺がなにかあるといいなーと。
物語をよく噛みしめるためなら少々お尻が痛いのくらい我慢するよ(笑)