boti-poti

観劇、LIVE覚書

bare  20141221

bare

2014.12.18〜28
中野ザ・ポケッツ

脚本 ジョン・ハートミア/デーモン・イントラバルトーロ
作曲 デーモン・イントラバルトーロ
作詞 ジョン・ハートミア

演出 原田優一
振付 中村陽子
翻訳・訳詞 藤倉梓/芝田未希
音楽監督 村井一帆

演奏
key 村井一帆
guit さとうひろゆき
bass 原田ソウ
drum 赤迫翔太

ジェイソン 辛源/鯨井康介
ピーター  岡田亮輔/田村良太
アイヴィ  ラフルアー宮沢エマ/平田愛咲
ナディア  谷口ゆうな/三森千愛
マット   神田恭平/染谷洸太
シスター・シャンテル 小野妃香里
神父    阿部裕
クレア   伽藍琳
ルーカス  土倉有貴
ターニャ  北川理恵
カイラ   島田彩
ダイアン  原宏美
ローリー  藤原明莉
ザック   佐々木堯
アラン   森本大介
カバーキャスト 豊田昌史/石毛美帆/町屋美咲




たまたま出演者の方のツイッターが目に留まり、原田優一さんが演出をされるという事で興味を持ったこの舞台。
タイミングよく上京している日にチケットが取れたので観ることが出来ました。
以下、いつも通りの私的感想文です。

ドラッグパーティや乱交、学生妊娠と、昨今ではドラマでも珍しくない内容だけど、やはり私にとっては身近ではない世界のお話。
加えて宗教色も強い作品とあって、そこに寄り添うことが出来るか不安でした。
けど、幕が上がってすぐにそんな不安は消え去り、小劇場ならではの濃密な空間と、舞台から押し寄せる熱気にのみこまれていました。
bare=顕わにする、曝け出すという意味だそうです。
そのタイトルどおり、各々が抱える鬱屈を吐き出していく若者たち。
特に、ナディアの持つ羨望憧憬嫉妬もろもろ肥大した自尊心もすべて、過去の私にリンクして、苦い懐かしさに年を取るってこういうことか〜・・・なんて。
今も確かにあるコンプレックスなのに、ナディアが気持ちを吐き出すシーンはアリスの時よりもリアルに迫ってこなかったというか、彼女の痛みを遠い過去のものに感じる自分に驚いた。
コンプレックスを隠す為に皮肉と自虐を繰り返す彼女は可笑しくて、かわいくて、でも近くにいたらちょっと面倒くさい相手。
過去の私はどうだったかなと振り返ってみる。これもまた自虐?自己愛?さて、どっちだろう。

そんなナディアの羨望と嫉妬の的になってるアイビィ。
私が見たのは宮澤エマさん。
アイビィの空気を震わせる慟哭。もう大人とうそぶく彼女が助けて欲しいまだ子供よと最後にこぼした本音の切なさに胸が窄まった。
ナディアとは昔からの付き合いなのかな。嫌味や皮肉だけでない、本音の混じった応酬に少しだけど距離が近づいたように見えた二人にほっとした。
アイビィにとってもナディアにとっても、寄り添っていけたらお互い大切な存在になれると思うんだけどな。

同性愛に宗教が絡むとどうにも難しいと思うのは私が信仰心をもたないからか。
同性愛に関して言えば、あまり偏見はもってないと自分では思ってる。性的思考や社会的立場がどうかより、その人となりに好感がもてるかどうかが重要。
けど、マイノリティの自分を曝け出して生きていくのは難しいのは分かる。そこに加えてキリスト教の教えとやらがふたをするから更に閉塞感が増して、全部うっちゃっちゃえばいいのに!と乱暴な考えに至ってしまうわけです。
当事者じゃないからそんな風に簡単に考えてしまうのかな。
それでも、どうにか出口を、突破口を求めて足掻いているピーターと、暗い箱の隅っこで息を詰めて生き延びようとしているジェイソンを見ていると自分達の事だけ考えればいいよ!って言いたくなっちゃう。
二人の葛藤(この場合は懺悔?)に答えるカミサマの存在も大きかった。
ピーターにはどうにもアッケラカンとした今時のマリア様。
あれはピーターの内にある明るさやおおらかさが具現化してあんな幻になって現れたって考えればいいのか。それにしたってなかなかファンキーなマリア様と天使で、これ本場で許されるの?って笑ってしまった。
まー敬虔な信者はまずこういった舞台観ないのかな?そういう人にこそ観てほしい内容だと思うんだけど。
ピーターの背中を押して励ましてくれるマリア様と、現実にピーターの悩みに寄り添ってくれるシスター・シャンテルがいたから彼は生きれたんだろう。
それに対してジェイソンは、神父様に懺悔した。しかも、相当追い詰められた状態で。
そして神父様は逃げた。生身だもんね、ユメマボロシで都合よくファンキーに行く道を明るくしてくれるマリア様のような答えは出来なかった。
ここでもやっぱり思うのが、宗教という重くて大きな蓋。
神父様だって人の子だから、ジェイソンの悩みに答えてあげたかったと思う。だからこそ最後に自分の犯した過ちをピーターに懺悔したんだろうし。
でも、ジェイソンに告白された神父様は神の子である自分を選んだからあんなことしか言えなかったのかなって。
人を導くための神の教えが悪いほうに作用するってほんと理解できないんだけど、それは先にも書いたように私に信仰心がないからなんだろう。
なんか、でも、もうちょっと何とか。と思わずにはいられない。

この舞台で注目して観ていたのはマット役の染谷さん。
初見なんだけど、第一声から好きな感じの声だ〜と。そうなったら出てくる度、目が吸い寄せられるのはお約束。
いつも二番手のマット。
アイヴィに振り向いてもらえないマット。
秘密を知ってしまったマット。
アイヴィはどうしてマットじゃダメだったんだろう。彼女が今まで相手にしてきた男の子達のように見た目だけですり寄ってきてるのを見透かしたから?
私にはそうは見えなかったんだけど、こればかりはアイヴィ視点だからわからない。
ただ、彼女に冷たく突き放される度に、行き場を失ったように立ち尽くすマットの姿が忘れられない。
彼女の背中を見つめるマット。
彼女とジェイソンの背中を見つめるマット。
知ってしまったマット。
マットとピーターのシーンはお酒とドラッグでハイテンションな分、すごく仲良しの友達に見えて、実際仲の良いクラスメイトだったんだろうって。
マットはあの時どれくらい酔ってたんだろう。どこまで計算してピーターに彼との事を聞いたんだろう。
きっとヒントや答は演技の中にあっただろうに、一度の観劇ではただ圧倒されただけで底まで読み取れなかったのが悔しい。
ああ、マット、マット。
ピーターも心配だけど、私はマットのその後がすごく気がかりだよ。


観に行こうと思った切っ掛けの一つ、宣伝で上がってた動画の舞台装置。
二面が壁で二面は吹き抜けの箱がくるくる回って扉になったり部屋になったり。
映像だと舞台一杯の箱に見えたけど、実際は舞台上に少し余裕があって窮屈な感じはなかった。
くるっと回るだけで場面が変わり、スピード感を保ったまま話が展開していくのに、そこがどこか分からなくならないのがすごいなって。
帰ってからyoutubeで本場の映像をちょろっと見たけど、そちらはNTN思いだした。
高いところからキャストが飛び出てきたり、一言発して歌って消えたり。同じめまぐるしいのでもあっちこっちに目がいくので私は苦手な方法です。
思ってもないところから人が現れて面白くはあるんだけど落ち着かないんだ〜。
なので、今回はスピード感ありつつも目がちらばらなくってとても見やすかった。
あと、見終わった後、とても悲惨な話なのに胸があったかくなった不思議。
ピーターは、アイヴィは、ナディアは、そして一番きがかりなマットはどうなってしまうの!?って気持ちはあるんだけど、だからこそ誰かに対して少し優しくなれたらいいなってそんな事を考えた。
まー夜行待つ間にパンフレット読んで、原田さんの思うつぼやんと笑ってしまったのですが。
でも、良い観劇でした。思い切って行って良かった。
ちょっとスリル・ミーに通じるものを感じたのですが、あまり大箱公演にならずにもう一度、二度は中野の濃密空間で浸りたい作品です。
めっちゃ再演希望!