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観劇、LIVE覚書

ブロードウェイミュージカル アダムス・ファミリー  20140510

PARCO Produce
ブロードウェイミュージカル アダムス・ファミリー

オリックス劇場
20140510

台本 マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
作詞・作曲 アンドリュー・リッパ
原案 チャールズ・アダムス
翻訳 目黒条/白井晃
訳詞 森雪之丞
演出 白井晃


アメリカはニューヨーク、セントラルパークの中に不気味な屋敷がある。
そこに住むアダムス・ファミリーは不幸や忌まわしいものが大好きなおばけ一家。
今日もアダムス家・家長のゴメスと、その妻・モーティシアをはじめ、家族が大集合。
フェスターおじさんは、お墓に眠る祖先達を取り仕切っている。
ある日、長女ウェンズデーのボーイフレンド、ルーカスが、両親アリスとマルを連れて、屋敷を訪れることに。
実は、ウェンズデーとルーカスには密かな計画があった。
それは、ディナーの最後に二人の結婚を告白し、お互いの両親に認めてもらおうというもの。
娘のボーイフレンド訪問というだけで、すでに複雑な心境の父・ゴメスと母・モーティシア。
さらにゴメスは、その秘密を先に知ってしまい、何も聞かされていない妻と娘の間で板挟みに!
いつも姉との遊びを楽しんでいた弟・パグズリーもさみしく思い、グラン間に相談をしたり、何かを企もうとしたり。
それぞれに気持ちを抱くおばけ一家のもとに、ついにルーカスとその両親が到着。
奇妙なアダムス一家と、人間であるルーカスの一家、どう考えてもうまくいくわけがない。
ルーカスたちが困惑しているところ、アリスの身に大変なことが起こり、屋敷の中は大混乱!
さて、ウェンズデーとルーカスの恋の行方やいかに・・・・・・。
(パフレットより)


浮かない気分を晴らそうと、面白いのやってないかな〜と急遽チケット取って行ってきました。
少し浮上しかけてた所を、ぐんっと押し上げてもらえるようなブラックユーモア満載の舞台。とっても面白かった!
以下、いつも通りの個人的な感想。セリフとか曖昧すぎるほど曖昧です!


ブラックジョークは苦手だけど、ブラックユーモアはとっても面白いんだなって教えてもらった素敵な舞台。
アダムス・ファミリーってビッグタイトルと、ミュージカル、演劇、お笑いの世界のビッグネームが揃ってるってだけで選んだんですが、正解でした!
事前情報何も仕入れず行ったから、生オケだったのもびっくり。
オリックス劇場も久しぶり。前は一階席で見晴らしよかったけど、当日券二階席はどうかなって思ったら見晴らしも充分。前の方の頭も気にならない高低差で本当に良い劇場に生まれ変わったな〜と。
余談なんですが、オリックスの一階席中2階までのなだらか〜な広がりがすごく好き。何でか分からないけど浜辺に下りて行く気分になるんですよね。なんでだろ?

オープニングはちゃらららん チャッチャのお馴染みの曲。
大阪一回目でしたが、客席から手拍子が出ていました。もちろん私も!こういうのはノらなきゃソンでしょ〜
舞台上には赤い幕を落とした劇場風のアーチ。
そこにふわふわっと写し出される手首の幽霊が、あちこち這い回ったり、写し出されるタイトルやスタッフロールを指さしたりするのがユニークでした。
最近では舞台でも映像でスタッフロールが流れる演出は当たり前みたいになってきてますが、手首の幽霊がいるだけで愛らしく可笑しく感じるから不思議です。
さて、手首がたららっと幕をあけると、靄のかかる中にあの家族のシルエットが!
何かやたらクッキリハッキリしたシルエットだなーどうなってんのかなーって見てたら、いきなりそれがバターンって倒れて、その奥に本物のアダムス一家が登場!
薄暗い靄の中でゆーらゆーら揺れるシルエットは不気味でユーモラス。
ホラーは苦手ですが、こわくない愛嬌あるおばけなら大歓迎です。
盛大に繰り広げられる音楽も必聴。パンフを読んで知ったんですが、ラテン系の曲だったんだって。パワフルロック系〜とか思ってたの恥ずかしい音楽音痴です。
ノリよく、オケの豪華な演奏とアダムス一族の歌声にぞぞぞっと鳥肌が。
ゴメス役の橋本さん、モーティシアの真琴さんはさすがに圧巻。
そしてやっぱりすごい!って唸らされたのは昆ちゃん。
昆ちゃんを観るのはロミジュリ以来なんですが、あの時もあんな小さな体のどこからこんな声が出るんだろうって驚いたもんです。
しかもさらに進化、パワーアップしてた!
弟のパグズリーと並んでも引けをとらない小ささですが、彼女は身長とか関係ない存在感がありますね。
あと、今回に関して言えば、ゴメス役橋本さん、モーティシア役真琴さん、
フェスター役今井さんにラーチ役澤さんと背の高い方ばかり。小柄な昆さんが並ぶとまさしく大人と子供です。
しかも澤さんなんて身長が二メートルもあるそうで、まさしくフランケンシュタインでした。
身長差ひとつとってもイラストそのままのアダムス一家でのっけからテンション上がりまくりでした。

物語の根底にあるのは「愛」
ゴメスは妻が一番。だけど、勿論子供たちのことも愛しているし、一族全員、死人も含めて大切にしてるのが物語を通して伝わってきました。
モーティシアにめろめろで、ウェンズデーの一件で隠し事を持ってしまった時はそれを隠そうと必死に取り繕う様が滑稽だったけど、そこがチャーミングで愛おしく見えたのはしっかりと家族を支えている顔も見えたから。
すったもんだあってルーカスとの駆け落ちもままならず、一人で家出しようとしたウェンズデーに語りかける姿は父親としての寂しさ、娘が巣立つまでに育った誇らしさが垣間見えてジンとしてしまいました。
モーティシアへの隠し事がばれて、家を出て行こうとした妻を必死に引き止める様も滑稽だけど無様ではなかった。
事あるごとに疑うモーティシアに「今すぐキミを抱きたい!」って言ってたけど、あれはゴメスからの必死の愛情アピールだったんだなって割と後のほうになってから気付いた(遅)
いや、ウソを誤魔化すためにエッチしよって言うの!?どうなんそれ!?っておカタイ倫理観が発動しちゃったんだよね〜。最終的に「事情があって今はいえないけど君を愛する気持ちは変わらないんだ分かってくれーっ」て血の叫びが聞こえて、そのやり取りが出るたびニヤニヤしてしまった。
モーティシアを迎えに行ったときも(っても門前だけど)、自分とモーティシアの事だけを考えるんじゃなくて、ちゃんと妻と娘の関係修繕も考えて言葉を選んでいたように思う。
「僕が君のお母さんに初めて挨拶した日のこと覚えてる?」と問われて、その時のことを思い出したモーティシアはまさに今のウェンズデー。
変わり者で何かといえば周りを引っ掻き回す母が大嫌いだったと言い放った後、ハッと我を振り返ったモーティシア。
ウェンズデーはあの頃の自分で、自分はいつの間にかあんなにも嫌っていた母とそっくりになっていたって結構ショックだったと思うんですが、それを突きつけるんじゃなくてやんわりと自分で気付くように仕向けてくれがゴメス。そして気付いた後もちゃんとゴメスがフォローしてくれるから傷は浅かったんじゃないかな。
「世界中の母親が一番聞きたい言葉を言ってごらん」なんて、ウェンズデーに母親に謝罪を促す言葉にときめいてしまいました。
これって原本通りなのかな。今回、「あ」と胸に引っかかるような言葉が散りばめられていて、翻訳の妙技に触れた気がします。言葉って大事。
なんかもーゴメス、良い男だな!よき夫でよき父で、男としても最高って非の打ち所がなさそうなんだけど、妻にメロメロでアダムス家に浸透して変わり者だからプラマイゼロだね。っていうか、ゴメスって婿養子??

モーティシアも、ゴメスを愛してるから隠し事やウソを嫌がるんだよね。それでめっちゃ強気に出て少しでもゴメスが怪しいと拒絶するのに、いざその隠し事がばれたら傷ついて自分が家を出ようとしちゃう。
パンフの対談で白井さんがモーティシアが夫婦間でウソや秘密が絶対ないよう強要するのはゴメスに甘えてるからってな事を言ってたけど、なるほどなーと。
実際身の回りにいたら鬱陶しいだろうけど、それを丸ごと受けとめられるゴメスだから、モーティシアも自分を丸ごと曝け出せるんだろうな。あんな風に甘えられる相手と出会えたのはモーティシアにとって最高の不幸なのかも!
ウェンズデーにしても、無意識にお母さんと自分が似てるって感じてたから、モーティシアの嫌なところが倍増して見えたんだろうな。
ほんと、母親とそっくりな嫌なところに気付くと「うわ」って引いちゃうんだよね。それってどこの家庭も似たようなもんなんだなーって実感しながらこの二人を見てた。
お母さんとそっくりな私。普通とは違う私。
だから、ウェンズデーは「普通」にこだわって、ルーカス一家が訪問している間だけでも普通にしていてと家族に強要するけど、中々思い通りにはいかない。
だって、相手がモーティシアだしね。
ボーイフレンドが遊びにくるって聞いて慌てたのはゴメスだったはずなのに、ウェンズデーがゴメスにルーカスとの婚約を打ち明けたあたりからモーティシアの態度が徐々に変わってくところなんかは「女の勘ってすごいな!」と思わずにはいられなかった。
ゴメスが挙動不審でばればれではあったけど、「ふーん?」なんてしらけた風を装いつつ、食後のゲームで追い詰めてやる!って計画立ててたんだろうか。あ、でもそれにしたらアリスの前で我が家には隠し事もウソもないのよてT堂々言いきってたから、確信したのはゴメスとウェンズデー、ルーカスの密談を見ちゃった後か。

ルーカス家との対比も面白かった。
一見、普通の一家のルーカス家の方も実はいろいろと問題を抱えてて、それがアダムス家の問題と対比的になってるんです。
夫のマルは真面目だけど頑固であまり家庭を顧みない、日本のサラリーマンのよう。
妻はそんな夫に辟易しつつ、何も言わずに黙って従ってる。そのストレスで詩とか読んじゃうようになったのかな?
ルーカスは弱気でへたれなトコ以外は普通の男の子(?)だけど、ウェンズデーと恋に落ちちゃうくらいだから根底は変わってるのかも。検視官になりたいって理由が内臓を見れるからだもんね〜。それに食いつくゴメスおかしい。
ウソも隠し事もない(はずだった)アダムス家と隠し事を抱えたルーカス家。
最初から上手くいくはずない両家にウェンズデーとルーカスの秘密の婚約も加わって、緊張感はマックス。しかもそのパンパンに膨らんだ風船を、姉さん恋しさで破裂させようってパグズリーまでいるもんだから見ているこちらもドキドキハラハラ。
大波乱の食後のゲームはその名も「大暴露大会」
絶対参加したくないネーミング!
超絶拒否のウェンズデーに、モーティシアが母の特権行使でゲームは進んでいくけど、グランマとフェスターの大暴露はかわいかったな。
102歳の私の手料理を食べたいって90歳がいてもいいじゃないって。わー、何かもう年齢的に恋とかしないわ〜って考えてたけど恋していいのか〜って気持ちになった。なっただけだけど(笑)
フェスターおじさんはお月様に恋してる気持ちを大暴露。これもすっごく可愛かった〜。
劇中でもお月様への気持ちを熱く語る歌があって、純粋にお月様を愛してるんだな〜ってふんわりした曲に、人形と目隠しと上手く使って表現する奇妙なダンスがマッチングして変な気持ちになりました。
狙って演出してるんだと思うんだけど、上半身だけ暗幕から出てて下半身は人形の足。でも両手はちゃんと出てるからその両足をどうやって動かしてるのかわからなくて、良い感じで「わーーなんかきもちわるいよー」ってなってた。
一番手になったゴメスはウェンズデーとの秘密の約束を守るべく、そして妻との誓いを守るべく、必死に抱えている秘密を童話仕立ての教訓話にして「今はいえないんだ!でも信じて!」って必死に語ってましたがモーティシアには伝わらず、さっくり「また後で当てるから」って言われてたのが可笑しかったです。
観客は神目線の舞台だったので、ぜーんぶ分かってるだけにゴメスの狼狽っぷりが面白くて、必死になればなるほど笑えるのがたまりません。
橋本さんの動きがまたおっかしいんですよね。シリアスよりコメディの方が見ていて楽しい役者さんだな〜。

この大暴露大会。回ってきた杯を飲んで暴露するってルールがあるんですが、ウェンズデーとルーカスを破局させようと、弟パグズリーがグランマの自白剤(名前忘れた)を盛った杯がアリスに回ってしまったからさあ大変。
アリスは普段から堪っていた夫マルへの不満を大暴露〜
でもこの暴露、昔の情熱的だったマルを取り戻してほしい。もっと私を求めてほしいって切ないものでした。
乱暴だけど色っぽく、スカートをはだけさせて歌う友近さんの弾けかたがすごかった!
一人コントが好きで、テレビでネタをやってるのは良く見てたんですが、舞台、しかもミュージカルってどうなのかな〜って思ってたんですよね。
ええ。もう、土下座でお詫びいたします。
今回が初舞台ではなかったんですね〜。最近は芸人俳優歌手って色々兼任している人が多くてびっくりです。
もちろん才能を発揮されてこうして舞台で出会えるのは大歓迎なんですが、一方で生え抜きの方たちの存在が軽んじられている気がしてならないのも事実です・・・
ともあれ。友近さんのアリスはお笑い畑の方なのもあり、間の取り方や台詞回しが絶妙でした。
アリスに夫婦間のことを赤裸々に語られて怒ったマルは全てをアダムス家のせいにして出て行こうとするんですが、このままではウェンズデーの恋が実らないとご先祖様たちが嵐を起こし、やむなく一泊する羽目になったルーカス一家。

ここからはどんどんお話が転がっていって、マルはアリスへの気持ちを改め、ゴメスとモーティシアの誤解も修復、ウェンズデーとルーカスは皆に祝福される事になるのですが、気持ちいいほどトントンと進む話に、厭きさせない歌や演出がたくさんで最後まで集中が途切れることなく舞台を見つめてました。
白井さんの演出はずっと観てみたいなって思ってたので、アダムスファミリー見ることが出来てほんとに良かったです。
舞台セットは絵から切り取ってきたような秒なパースのついた寝室やリビング、玄関先の「一部分」。
ディナーのときのテーブルも大げさなほどパースをつけて大空間に見せいていました。
ウェンズデーの部屋なんかはトリックアート?って思わせるような部分もあって、それが見せる角度を変えるとまた違ったように見えて面白かったです。
ルーカス一家がセントラル・パークの中を行くシーンでは、ご先祖様たちが前後左右にスクロールしたり、風に横倒しになったりと、木を操るのを感動しながら見ていました。
最近は映像で表現する舞台も多いですが、あえて人が動かすことでこの物語のおかしな部分が膨らんでいたように思う。
メインのアダムス一家とルーカス一家より、ご先祖様たちの動きが気になってそちらに目が行っちゃったりね。
さっきも書いたけど、飽きることも集中力をとぎらセルこともなく最後まで見せるってすごいことだと思うんです。
休憩破産で二時間半、中だるみとか私は感じることなくあっという間の楽しい時間でした。
まだ一本観ただけですが、白井さんの演出好きだな〜と感じたので、また他の舞台も見に行きたい。
やっぱりオセロ観れなかったのが悔やまれる〜。再演希望だわ!
あと、すごく個人的な気持ちですがロッキー・ホラー・ショウを白井さん演出でやってほしい!