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観劇、LIVE覚書

SHOW・ACT ファウスト・オデッセイア    20141102

SHOW・ACT ファウストオデッセイア

2014.10.29〜11.05
博品館劇場

脚本・演出 荻田浩一
音楽 la malinconica
振付 舘形比呂一、長澤風海

DIAMOND☆DOGS
彩輝なお
若生加世子
田極翼
長澤風海

とあるミュージシャンのもとに、黒衣をまとった不吉な感じの男が訪ねてくる。
彼は、物語を題材に、曲を作って欲しいと依頼する。
それは、次のような物語である。

場所は、アジア的な雑踏。陋巷。
妖しげな人々が行き交う、仄暗い路地裏。
そこは悪魔・メフィストフェレスが支配する、魔物達の巣窟、彷徨える魂の牢獄である。
メフィストフェレスの分身とも言える黒犬が、看守よろしく街を見回っている。
その街に迷い込んだ魂が一人、真珠のような無垢の輝きを放つ司祭である。
彼は、かつて自分に叶わぬ恋をして、それが故に狂い、出奔してしまった娘を捜している。
捜しているうちに、悪魔の住処に辿り着いてしまった。
司祭に言葉巧みに近づくメフィストフェレス
悪魔は、失われた娘を捜す司祭の度に同道し、彼の心の闇をこじ開け、押し広げていくのである。
悪魔は、司祭を誘惑するが如く、かつて自分が陥れた男達・ファウスト達の物語を語って聞かせるのだった。
(パンフレットより)


このストーリーを追おうとすると途中で破綻してしまい、もう目眩くインナーワールドへゴー!でした。
そんなわけで、以下私見偏見にあふれたいつもの感想文です。

オギー節全開のとても難解でとても面白い舞台でした。
観てる最中に「これ、アルジャーノンと同じ演出家さんだよね?」と、ふふっと笑いそうになってしまうくらい違ってて、荻田先生の頭をパカっと開けてみてみたいものです。

ストーリーの大骨となるのはゲーテファウストだけど、荻田先生オリジナルの解釈や表現が満載で、ダークファンタジーといった印象。
というのも、類タカ演じる「スト(ー)リート・ミュージシャン。ゆずみたいな」(類さん曰く笑)のせい。
最初は二人の位置づけが謎だったんだけど、メフィストに物語の中に引きずり込まれ、傀儡にされたという解釈でいいのかしら。
二人の人形のような容貌に、お遊戯みたいな言い回しが、少しぶきみで、少し可愛くて、少しおかしい。
そんなストーリーテラーでした。(あってるかわんないけど)

その二人が彩輝メフィストに「歌を作ってほしいの」と声をかけられ、めくるめく物語が始まる。
けど、パンフレットに書かれているストーリーを追おうとすると苦戦します(笑)
私が読み解けなかっただけだろうけど、毎回、告知時のあらすじやうたい文句を真に受けて観にいくと「?」が乱立する。それがDの舞台。
わかってるはずなのに何故毎度同じ事を繰り返すのか。しかもそれがクセになってまた次観にいくのよね・・・懲りずに。
そんな独り言はさておいて。
SHOW・ACTと銘打たれたこの舞台、セリフのやりとりで物語が進むのではなく、ダンス・ショウと歌の合間に各々が独り言のように呟いてはまた物語の波にのまれる、または本のページが捲られるように進んでいきます。
ダンスもかざみんが二十曲ほど振付をしたそうで、いつものD公演とは違った趣でした。
ダンスのあれこれに詳しくないのであくまで私見ですが、バレエ的な表現が多かったのかな。
もちろんコンテもあり、新吾さんのソロなんかはまんま森新吾でしたが、かざみん振付の場面はバレエを見慣れていないだけにかなり目新しく楽しめました。
四つ這いになった皓ちゃんと新吾さんの上にリーダーが乗って、そのまま二人が身を起こして進む中、少しずつリーダーが立ち上がる所は進行方向である上手で見るとかなり迫力あった。
あまりにもそこの印象が強くてどのシーンだったか出てこないんだけど、あれはこの世ならざる場所にファウストが踏み込んでいくってな受け取りかたでよかったのかしら。それとも更に堕ちていく?
ぎょろっと目を剥いた二人と、青ざめた様相のファウストがどんどん大きくなっていくのがすごくおそろしかった。

なんとなくリーダーを「ファウスト」と書いているけれど、実際は司祭でファウストで真珠の乙女(?)でもあったのです。
そして彩輝メフィストメフィストでありメフィストの傀儡であり真珠の乙女でした。
こういう解釈であってるのかどうか判らないんですけどね。
彩輝メフィストは黒犬かざみん(本物の悪魔メフィスト)に操られていて、司祭を乙女のもとに誘いながら彼を翻弄、誘惑する。その旅路の中でファウストたちに刺激され、真珠の乙女だった記憶を取り戻していくって感じなのかな〜と。
司祭は司祭で、乙女を捜す旅路のなか、ファウストの見せる妖しげな物語、過去のファウスト達の影に染められそうになるけど拒否する。と。
あくまで私の「こんな感じかな〜」なので、すごく偏ってます。
でもこの舞台自体が騙し絵を右から左に見せられているような、ぶれぶれの写真を何枚も重ねてたら一瞬ピントがあった絵が見えたような。でも次の瞬間にはまたぶれぶれで何だかわかんなくなっちゃう。
そんなふわふわもわもわもぞもぞした舞台だったんです。


D麺ダンサー組はかつてファウストと呼ばれた者達の亡霊。
近代化されていく中で暴かれ、淘汰され、抹殺されていく不可思議たち。
奇術科学呪術・・・と裏表の言葉を並べる歌詞(せりふ?)も、現実からどんどん遠ざけられるおまじないのようで、あーこういの大好き!ってのめりこんでいきました。
其々の犯した罪になるのかな。七つの大罪を一つずつソロで表現。

第一の罪、愛欲は泰ちゃん。
振付は舘形さんで、めちゃくちゃ緊張していたようです。
踊り始めは少しリーダーが絡むんだけど、あっちいっててって感じでとんっと押されていました。
トークショーで新吾さんに泰ちゃんなりのビジョンはどんなのと聞かれ、場所は島根、彩輝さんと若生さん二人のチャンネー(新吾録)を翻弄したりされたりだそうです。
踊る三人の周りを黒犬かざみんがうろうろしてて、最後は黒犬が泰ちゃんに抱きついて「チャン☆」ってオチでした。
それまでが結構どろどろと重い暗いの繰り返しだったので、ほっと息を抜ける貴重なシーンでした。

第二の罪は物欲。新吾さん。
トークショーでチラッと言ってたのが、かざみんに自由にやらせてもらってます。との事で、私が観たマチソワでも少しずつ違ってるところがあって新吾さんのダンスを堪能できた。
シルバーグレイのスーツに同色のネクタイとハット。シャツは黒。
スタイリッシュやく・・・いやいや、ジゴロ?
暫くスーツ姿拝んでなかったから、出てきた瞬間、かっこよさにクラクラしました。
アルジャーノンのいたいけかわいいのどこいったーってくらい別人で、でもどっちも好きだーって。翻弄されまくってて、この人こそ悪魔じゃないかと思ってみたり。
ダンスはもういつもの新吾さんです。縦横無尽に飛び回る姿はただただ圧巻。
かざみんに帽子を取られてもがき苦しむ姿には、見えるはずのない圧力が見えるような気さえしました。いや、見えてた。
びくんびくんと痙攣しながらのたうつ姿がこわくてですね。
物欲というか執着?帽子を返すとと少し元に戻るんだけど、最終的にかざみんに潰されてしまいました。

第三の罪は嫉妬。かざみんとつっくんのターン
触れてなかったけど翼君、今回すごい出で立ちです。
赤紫のぱっつんボブに毒々カラーの衣装。最初出てきたときリーダーと見間違えたのは内緒です。(え?リーダーがヅラって珍しいって思った←)
そんで、話の流れ上何となく罪を犯した若生乙女が地獄に落ちて劣化したのがつっくんだと思ってしまい、幾らなんでも劣化しすぎやろと突っ込んだのも内緒です。実際は魔女だそうです。
その魔女と黒犬の嫉妬ダンス。
まだ記憶にサロメの隊長と首切りナーマンがこびりついてて、その二人がふざけあってるように錯覚してしまうことしばしば。
張り合うように踊って、「ムン」とにらみ合ったりするのがコミカルでした。
ここもほっと息がつける場面・・・のはずなんだけど、二人の容貌が濃すぎてかなり面白いことになっています。
それにしても翼君の女装が意外にイケててびっくりです。

第四の罪は貪食、皓ちゃん。
貪欲ではなく貪[食]だそうです。
全てを最後まで食らいつくす。最後の一人になっても。てな意味深な語りが入っていまして、更に迷彩ミリタリーな衣装の皓ちゃんに否応無しにグロテスクな事柄を創造せずにはおれませんでした〜。わぁんグロは嫌い!
しかしながらブログでも触れてましたが、こういう世界が好きなんでしょうね〜。
ダイナミック狂気。
バーンとスポット浴びて舞台後方中央に現れた時は、夜道でこんなのに出くわしたら勝てる気がしないとボーゼンとしてしまいました。
ステッキを銃に見立てたり、肉?骨?になったり。
黒犬かざみんが物欲同様それを取り上げて皓ちゃんを翻弄するのですが、取り上げられてもがき苦しんでいた新吾さんとは違い、狂気と恍惚の表情でそれに飛びつき追いかける皓ちゃん。
座して手を伸ばし食らい、また手を伸ばすを繰り返す表情は、大好きな料理を目の前にした子供の純粋さも垣間見えゾッとさせられました。

ここで一幕終了なのですが、ぬるっと始まってぬるっと終わった感じです。
客電ついて「あ・・おわ、り?」(パチパチパチ)って感じで戸惑いがちに拍手してしまった。
夢の中で夢を見てて、まだ覚めてないんだろうな〜て感覚に近いかも。
しかも現実を忘れさせてくれる舞台。ではなく、現実からひっぺがされて悪夢の中に放り込まれるよな舞台です。

さて第二幕。
第五の罪、怠惰。利さん。
毎回、罪を類タカが数えてくれるんですが、タカ「第五の罪」類「怠惰」と言う所で私が観た夜公演、類さんが「怠惰」をかなり食い気味に言って笑いがおきてました。
トークショーでも突っ込まれて、利さんが自分の出番なのに笑いを堪えるのに大変と言ってました。
新吾さんもはけるときにニヤッとしてたけど、たしか昼公演もニヨニヨしてたからあそこはなにかあるんかな〜?
どこだったか忘れてしまったけど、D麺四人で内向きの輪になって踊るところでは、皓ちゃんの正面に居る新吾さんがぷるぷるしだしたり、皓ちゃんもによっと顔が緩んだりしてたな。
閑話閑話。
怠惰は夫婦間の問題?
それまで斜めに上がってくスロープ(高架下や橋げたのようなセット)がむき出しだったとこにカラフルな布がかけられてほのぼの家庭のダイニングキッチンに変身。
そこで冷めきってるのかラブラブなのか微妙なラインの利さんと若生さん。
若生さんは一幕の前衛的ドレスからグレーのスカートと白いシャツに着替えてました。
お互いにちょっかいかけては拒否したり受入れたり。
面白かったのが、利さんに肩を抱かれた若生さんがぴょんぴょんと跳ねだして、そこから二人してぴょんぴょん楽しそうに飛び跳ねて踊るところ。
可愛いんだけど何だかシュールで、あーバレエの表現(偏見)だ〜、と。
しかしきゃっきゃうふふしてたのも束の間。
若生さんがお腹に両手を添えて、上下に彩輝さんとリーダーが現れたあたりから雲行きがおかしくなりました。
妊娠した(?)妻にいきなり暴力を奮い出す夫。酷い!
妊娠し、男に捨てられた真珠乙女の寓話再現ってところでしょうか。
二人にリンクするように彩輝さんとリーダーが踊っていて、やっぱり彩輝さんが真珠乙女なのかなぁと強く思わされたシーンでもありました。

第六の罪、傲慢。風海さん。
ここでようやく黒犬=悪魔メフィストと明かされ、それまで匂わされていた疑問符が少しばかり解消されます。
この風海さんのダンスがものすごくパワフルで暴力的。
風海さんの初見はダンスシンフォニーでキレのあるパフォーマンスながらもたおやかでまっさらな印象でした。
D公演のゲストでも可憐推しの役回りが多かったように思うのだけど、いつのまにか妖精さんはダークモンクにジョブチェンジしていました。
トークでも言ってたけどDに染まりすぎです(笑)
レボレボさんを彷彿させるひも状の衣装は一幕二幕通して変わらずでしたが、ニ幕からは銀色のひらひらがついてた?ん?最初からこれついてたっけ?
まあいいや。←
サロメの親衛隊長もかなりダークでしたがあちらがシャープな悪役なら、こちらは悪魔らしく暴虐と蹂躙て感じのとっちからかりよう。
そして何より凄いのが、風海さんがいないシーンってほぼないんですよね。
途中から入ったりはけたりするものの、どのシーンにも大体悪魔がいる。
そういえば、怠惰ではダイニングテーブルの下で飼い犬よろしく丸くなってました。
ほぼ出ずっぱりで終盤にきてのソロ見せ場、そしてこのあとも出番は続くよ最後まで。
そりゃエナジードリンクも飲むわ。

メフィストのネタばらしが終わった後、ぞろぞろ出てくる異形の者。
ここまで来ると、「乙女」である若生さんの衣装やメイクが真珠乙女にしては禍々しいような?と気になっていたのも解消です。
リーダー以外はすべてメフィストの手の者って考えればいいのね。
類タカが言うには、この世界を終わらせるにはファウストが「もういい、もう十分だ」と一言言えば終わるらしいんですが、それはつまりメフィストを開放して命を食われるということ。
そしていつの間にか悪魔の謀に引き込まれていた司祭。
捜し求めていた乙女が彩輝メフィストで、その彼女も悪魔の傀儡で、かつての数多のファウストになりかけていた司祭。
怒り爆発です。

第七の罪、憤怒。東山リーダー。
振付は舘形さん。
前もって荻田先生と打ち合わせをしていてイメージは出来ていたそうで、三時間ほどで振付されたそうです。
「関節柔らかいね〜」「腕長いね〜」と、東山さんのいいところを存分に活かしてくれたと嬉しそうにトークでおっしゃってました。
他のメンバーいなかったそうで、早かったんですね〜って感心してた。
そんな嬉し恥ずかし憧れの舘様振付の憤怒。(本当にうれしそうにはにかみながらおっしゃってたので・・・)
かざみんのバレエ色濃い振付も目新しかったですが、こちらもこれまでと違った東山さんが満載でした。
白いふりふりがついたパンツに上半身は裸。主に上半身を使う動きが多かったので見ごたえたっぷりで肉体美を堪能させて頂きました。
このごつくていかつい人を16歳の美少女と見まごうたのは二ヶ月ほど前でしたのよ。
あ、でもフェロモンは今回抑え目だったように感じます。
ダンスマジックでは着衣ながらもエロスを感じたのだけど、今回は司祭だからかそういった要素は一切感じられず、この憤怒ではただただ純然たる怒り、憤りが雷のように閃いていた。
憤怒って言うとダンスシンフォニーの地を思い出すけど、あれとも全く違う。あっちが土着の神様なら、こちらは三対六枚の翼をもつ天の使いってかんじ。
ハイ言いすぎたー。
そのお怒リーダーを恐れもせず、メフィストかざみんがてこてこっと近寄っていって、ツン。と肩や腕をつつくので「うぉおい」てなりました。
なんて怖い物知らず!
まー悪魔なんで怖い物なんてないんでしょうけど、ちょっと拗ねたような表情でゲキオコりーだーを構いに行くのが面白かったです。
メフィストが「あっち」って指さすと、しれっと別の方を向いたりメフィストから離れたり。
結果的にメフィストは司祭をファウストにしてその魂を喰らうって目的を果たせなかったのかな。

怒りのターンが終了して、そのままフィナーレかと思いきや、また最初のシーンに逆戻り。
つまらなそうにしている黒犬メフィストにハットを渡し、ストリートミュージシャン二人に彩輝メフィストが「歌を作って欲しいの」と声をかけて再び物語が繰り返される予感をそのままにフィナーレでした。
Dの公演もだけど、荻田先生の舞台は(数えるほどしか観てないけど)最期にすっと幕が下りるのではなくレビューがあるのが嬉しい。
次々と出てくるキャストが歌い、踊り、それぞれ之技を見せつけてくれる。
今回は若生さん彩輝さんと女性が加わってより華やかで麗しいショーだった〜。
劇中、若生さんの髪型がちょっと妖怪ぽく、メイクもどぎつくて怖い印象だったんだけど、髪を下ろしてきれいにターンする姿は格好良かった〜。
ハットかぶって踊る所も、帽子の扱い方や指遣いが違ってて目が幾つあってもたりない。これDVDに全員ちゃんと入ってるといいな〜。
なにせ人数が多くて色々重なっちゃってるから心配です。

は〜・・・それにしてもほんとに濃密なステージだった。
ここのトコ重めが続いてるからVDSは軽やかに楽しくお願いしたいです。