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観劇、LIVE覚書

しあわせの詩  20131012

しあわせの詩
one on one25th note

赤坂RED/THEATER
2013.10.09〜14

作・演出・音楽:浅井さやか
演奏:はんだすなお

島健 :上野聖太
桔平  :内藤大希
渡辺悦子:岡村さやか
詩織  :千田阿紗子
梔子  :蔵重美恵
蛍   :田宮華苗
狛狐吽形:美木マサオ
狛狐阿形:正井雪香
楓   :小野田龍之介


あなたの、すべたが満たされる
本当の願いは、何ですか?
今宵、旅立つ君におくろう しあわせの詩


アメスタやラブミュ見てると、レンからどんどん楓の顔になってきている龍ちゃんに楽しみを募らせながら行ってきました。
赤坂レッドシアター、初めての場所だったけど素敵な空間。
そこで味わった素敵なファンタジー
以下、いつもの通りの私的感想文です。

日本人のためのオリジナルミュージカル。
確かに、ミュージカルって言うと少し仰々しいくらい派手で、濃ゆーい顔の人達が愛や悲しみを歌ってるイメージがあったかも。
けれど100%オリジナルのこの作品、心がほっと解けるような。
セットも小道具もなにもかも、丁寧につくられていて、そこから創り手の愛や優しさを感じました。

願いが満たされた時に旅立てるという掟に縛られて生きている森の狐たち
ケガをしてもたちまち治ってしまう不思議な秘密を抱え、満たされないまま生きてきた人間の健
二者を繋ぐ健の母、詩織の存在と、掟破りの謎。
ずっと「旅立つ」の意味を、思いが満たされた時にその世界の呪縛から解き放たれて自由になるんだと思っていた。
それが「死」である事は早々に明かされて、確かに全てから解き放たれて自由になるという意味においては同じなのだけど、何だか切ない、やりきれないと途中までは思っていた。
楓が旅立つ事を最高のスクープだと喜ぶ健に、それって死ぬってことだよねと悦子がただしても動じない彼に(むしろそれこそスクープみたいな感じ?)傷つかない体をもって、痛みを感じないだけでこんなに残酷になれるのかと。
彼は彼で自分の矛盾に苦しんでいるのがその表情や仕草から見て取れただけに、心の痛みを感じているなら、他者を労る気持ちが少しくらいあっても良かったんじゃないかと考えて、そこに健の弱さが集約されてるのかなとかごちゃごちゃ考えてしまったー。
桔平が健に会えてあまりに喜ぶもんだからさ。
楓は健の一言で決心したって言うのにさ。
それを「ちょっとけしかけただけで」なんて言われたら、切ない通り越して腹が立ってしまったのですよ。
死ぬって言うのはこわいことだし、けれど永遠の命もこわい。
ずっとずっと何も無いまま満たされないまま生きるより、いつか満たされて旅立ちたい。
そんな狐たちの思いが中々健に届かないのがもどかしかった。

ずっとずっと外の世界に憧れて、でも一歩を踏み出せなかった楓は桔平のことがあってこわかったんじゃないかな。
間違った思いで一歩を踏み出せば、願いの葉は枯れてしまう。
今までそんな事になったことがないから、物知りのオババもそれで桔平がどうなるのかわからない。
もしかしたら永遠に満たされないまま生き続けなければならないかもしれない。
それはとても怖ろしいことだから、心に蓋をしてしまっていたんだろうか。
それが健の一言で開いた。それは外から来た人間の、詩織の子供だったからなのかな。
でも、心の声に従って旅立つ事を決心した楓の表情が満ち足りて、幸せそうだったから、狐たちにとっての旅立ち(死)は無ではないんだと感じてほっとした。
何十年も何百年も満たされず生きてきた彼らが、ほんの一瞬満たされて旅だった先が死の世界、「無」だったらあまりにも悲しい。
輪廻転生なんてこの物語にはやぼったいかもしれないけど、桔平を迎えに来た楓の表情は穏やかで優しかったから。
鳥でも、風でもいい。長い生に捕らわれていた楓には一瞬の命だろうけど、その一瞬に幸せを感じてくれてればいいな。
桔平も、ずっと不安だったんじゃないかな。
詩織を救うためにこれしかないと踏み出したけど、願いの葉は枯れてしまった。
その後、詩織は亡くなり、健が遠くにいってしまって、蛍が言うように心が欠けたまま過ごしていくのは辛かったと思う。
だから、健が戻って来た時は本当に嬉しそうで懐かしそうで、自分がやったことは間違いじゃなかったと成長した彼を見て安心したんだ。
でも、現実はそうではなくて。桔平の血を分けたことで詩織は死に、健もまた傷つかない特異な体質になってしまった。
健に責められた時、詩織の死の真相を知った時。
桔平が壊れてしまいそうでこわかった。
もう本当にどうなっちゃうのって苦しくて苦しくて、助けて上げてって祈るしかなかった。
桔平の願いの葉が光った時、すごくほっとした
桔平だけに分かった本当の願い。その時を待っていた詩織の想い。
掟を破ってしまったけれど、もう充分苦しんだからいいんだよって許されたってことだよね。
この子が笑って過ごせますように。健康で過ごせますように。
母親なら誰でも思う事なのかもしれないけど、詩織はきっと人よりその願いが強かったのかな
彼女の想いを桔平が本当の意味で知ってようやくそれが本当の願いになったのかな
桔平を迎えに来てくれたのが楓で良かったと思う。笑っていたから

健も、子供みたいに泣きじゃくって、やっと解放されたんじゃないだろうか。
痛いのが嬉しいって変だけど、健はそれをずっと願ってたんだから。
いなくなってしまった二人に寂しさはあったけど、やっぱりその先にあるのは無じゃないと思えるから悲しくはなかった。
最後、すごく体があったかくなってぽかぽかして気持良かった〜
私の中にあったなにかも少し解れたのかもしれない。
しあわせの詩。とってもしあせな気持ちをくれました。


と。ここまでは真面目な感想。
で。こっから先ほぼ龍ちゃん賛歌です。
あと各キャラのお話。これもちゃんとちゃんとね!

とにかく、こんなクールキャラって見たことあったっけ?って振り返って、意外となかったことに驚いた。
直近で言うとレンは真逆のキャラだし、ビンゴはどっちかと言うとコミックメーカー。ソロンゴは真面目だけど純朴な青年で、カンターレラは悲劇的だったけどクールキャラではなかった。
なんか、本当に意外!龍ちゃんて見た目クールだから(え?)そういうキャラ演じててもおかしくないのになーって。
楓は見た目もすっごいエキセントリックで、サイドダブルブロックの刈り上げにロンゲと編み込みのエクステつけてさー。
くるっとした前髪が涼しげな目元に影を落として、出てきた瞬間「きゃーーーーーーーー(涙目)」でした。
人懐っこくて明るいキャラの桔平と、いつもプンスカしてる妹キャラの蛍を相手に鬱陶しそうにクールに振る舞うところがなんか・・・何か・・・すきっ←
声もちょっと低めにだしてたのかな〜。落ち着いた大人の雰囲気が少し出てたけど、桔平の一言で背中押されて旅立つ事を決めた時に見せた溌剌とした姿が本当の楓のような気もする。そしてそっちが龍ちゃんに凄く近い(笑)
それにしても終始だるそうに寝転んだり座ったりする姿がまたちょっとだけ色っぽかったり格好良かったりもして、はー・・・いいものみた。
髪型も衣装も尻尾も仕草も何もかもがツボでした。
人間が落としたどこかの風景写真が載った雑誌のページを大切に持ってて。くしゃくしゃになってたから何度も開いちゃ見てを繰り返したんだろうな。カワイイやつめ。
歌も誌も曲もすごく世界観を担ってて、ずっと日本昔話の大人向けだと思って見てたんだけど、そういう歌を聞くのも初めてだったので新鮮でした。
童謡とはまた違うんだけど、日本の趣が詰まってる曲だなって。
嬉しいことにソロパートもあって、あ、この歌はこんな風に歌うんだって気持ちが溢れててそれにも胸を打たれました。
これ何重奏なんだろうって所もあってびっくりした。
悦子さんの歌声が好きだったり、でも龍ちゃんは鉄板だし蛍ちゃんも好きなんだ〜とか、色々です。
桔平の大希くんと本格的に絡んでる芝居も初めてで、当たり前だけどトーク番組で絡んでる二人とは全く違って、でも雰囲気がすごくよくて見てて楽しかったな。
キッと健と睨むとことか、桔平相手に呆れる顔とか、枯れてしまった桔平の葉に不安そうに曇る表情とか、間近で見れて幸せだった。
席付いた瞬間、舞台とのあまりの近さに戦いたけど、見終わった後にはありがとう公式と頭を垂れたわ。
あ、でもでもカテコでまでツンッとクールキャラでドキッとしてしまいました。
おすましカテコが久しぶりだったからかな。どっか具合悪いのかな、ってヒヤヒヤしてたら、なんと、プロデューサーさんから「楓はクールなキャラだから、カテコで騒いでイメージを崩さないように」とお達しが出ていたそうです。
でも、コメントを求められてどうしたのってなって、そんな事を喋りながらずっと喋り続ける龍ちゃんがおかしかった(笑)
クールぶりながら喋り続けるものだから、オババに「まだ喋るの」って突っ込まれてたのがおっかしかったー。
結局クールで知的な役はやれても、クールで知的にはなれないってことだよね!そんな龍ちゃんが大好きです!


舞台が始まる前から雰囲気作りは始まっていて。
あれ、十五分前くらいかな。ととっと気配がしたから顔を上げたら、狛狐阿形が竹藪にいてびっくりしてしまいました。
そろーっと動くもんだから、こっちも目が離せなくて、野生の動物と出会ったような感覚(笑)
暫く見ていて(というか、目が離せなくて)ある瞬間、緊張感からふっと解放されたので再びパンフ読んでたら、こんどは吽形がバタバタッと出てきて、えっ?やっぱもう始まるの!?って顔を上げたら、阿吽二人でジャンケンしだしてかくれんぼが始まりました。
狐ジャンケン、詳細を教えて欲しい・・・
女の子の阿形の方が活発なのかな。男の子の吽形は週シオされっぱなしでしたが、この二人ダンサーさんなのか体の動きがしなやかでキレッキレで凄かった。
劇中踊る所もあって、側宙とかまんま目の前で思わずびびってしまったわ。
開幕前のそんなお遊びも客席巻き込んで、後の人が「回を追う毎にやることが派手になってる(笑)」って言ってたのがおかしかった〜

楓の他だと蛍ちゃんがすっごくすきで、こんな妹いたらうざかわいいだろうなーってニマニマ。
桔平のことも楓のことも本当に好きなんだろうね。恋心ではなく、兄姉愛?家族愛的なものを最後には感じました。
詩織に対するヤキモチも、お兄ちゃんをとられて悔しいって感じだったのかな。
悦子とだんだんうちとけてったときの、ぷんすこ照れてる所もかわいかった。アタマなでくりまわしたくなる子でしたね!
カテコの時目の前で、拍手しながら見上げたらぱっと笑ってくれたあの笑顔が「めんこーーーーーー!!」ってなってくらくらでした。
出来ることならバッグに詰めて持って帰りたかった〜

とか、バカな事言い出したのでそろそろ締めましょう。そうしましょう。
しあわせの詩。
言い厭きるほど言っても足りないくらい素敵な作品でした
ほっこり心が弛むというか、昔話って書いたけど、日本人のDNAに確実に彫り込まれている何かを擽ってくれる作品です。
CGとかギンギラのこゆーいネオファンタジーもいいけど、やっぱこうゆうの落ち着くなぁと思った次第です(ギラギラのお兄さん達は大好きですけどね)
こちらもDVDまちだけど、嬉しいことにCDが先に手に入っているのでそれを聴きながらしばらくは森の世界に浸りたいと思います。