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観劇、LIVE覚書

新オオカミ王ロボ 20130331

新オオカミ王ロボ

2013.0329〜0407
全労災ホール スペース・ゼロ

シートン動物記 オオカミ王ロボより
脚本・演出 源井和仁
  

2011年から2年目の再演。
キャストが変わってたり、演出も少しずつ違ってました。
何よりこの作品に対する自分の勝手な思い入れがあって、OPで全員そろっての「森の王者」で落涙してしまいました。
色々と舞台以外の事についても触れています。震災のこととか。
感想と言うよりは、3年間仕舞っていた気持ちを少し吐露した感じかも。
観劇感想をお求めの方は回れ右です。


前回、3.11の震災後。
東京へ今行ってもいいものかどうか、とても悩みました。
阪神淡路大震災を経験した者として、今も杳と知れぬ日々を過ごしている人達がいるのにという後ろめたさと、もし大きな余震がきたらという恐さからです。
実際、公演が行われるかどうかもハッキリとしていませんでした。
行くなら宿泊や交通の手配をしないといけない時期です。
どうなるんだろうと、公演の事も震災の事もごっちゃになって鬱々としていた時に、小野田さんのブログで稽古が再開されたことを知りました。
その後もぽつぽつと上がってくる記事。
小野田さんの葛藤はそのままエンタメ業界全体が抱えるものだっただろうし、私自身の葛藤でもありました。
でも頑張っている人がいる。
余震や原発問題で不安な中、行こうって気持ちになれたのは、だからなのかな。
あちこちで縮小してではあるけれど、劇場の幕が上がっていくのに、勇気をいただきました。
私たちに笑顔を届けるために活動している人がいるなら、その気持ちを受取に行かないのはウソでしょう。
あの頃、そんな事を書き残せなかったのはどう書いても欺瞞になりそうで恐かったから。
ただ単に自分が楽しめたらよかったんやんって、自分を詰りたくないからです。
今だってそう思ってる。半分以上。
でも、行って良かったと思える公演でした。
子ども向けの舞台ではあったけれど、しっかりと大人も楽しめる素晴らしい舞台でした。
何より、命とは何か、生きるとはどういう事かを説いた部分は子ども達には少し難しく、大人には胸に詰まされるメッセージがあったと思います。
そして今回、再演を観て、あの頃感じたこととはまた違う事を考え、感じました。
振り返ってみると、あの頃は震災の事とごっちゃになってお話を観てしまっていたんだと思います。
今回はちょっとは素直に感想を書けるかなと思い、書き残すことにしました。
前置きが長くなってしまったけれど、以下いつもの私的感想文です。


冒頭の森の王者だけで落涙してしまった。
素晴らしいハーモニーに前回の観劇の事が頭を過ぎったからかも知れません。
女性コーラスと男声コーラス。子ども向けにしてはやや重厚なメロディ。
それでも、これを観た子ども達の記憶にこの歌が残ることは間違い無いんじゃないかな。
そう言えば今回は小さな子達が大勢いて、観劇中もかわいい笑い声で賑やかでした。
出演者に王子様が多いから(笑)大きなお友達がたくさんいる舞台ですが、子ども達の反応の新鮮さ素直さに別の所で感激してしまったわ〜
所々変わっている演出に、「お」となったり、キャストの迫力に「おぉ」となったり。再演ならではの楽しみどころも満載でした。
相変わらず龍ちゃんはワンワンワン一曲だけなんですけど、それ言ったらソロがあるだけでもいい舞台だよと今さら気付いた。
ワンワンワンへのくだりも変わっていて、こんなシーンあったっけかねと首を傾げつつ、3匹のチワワ達にクスリ。
オーバーアクションのビンゴに爆笑でした。
ロボとブランカが翔の部屋に入ってくる演出もセットごと変わっていて、これは子どもが観たら「わっ」ってなる仕掛けだなと。
実際私も「わっ」ってなりましたしね。ええ、いい大人です。
ブランカはちょっと子どもっぽい感じ。ロボに頼りきってあまえてるーって感じがしました。
実際、まさしの貫録がハンパなかったんですが、初演は静かに寄り添う姉さん女房的な空気を感じていたので、違いが面白かったです。

なるべく以前の記憶を薄くして観たかったので、ロボのDVDは再演が決まってから観ないようにしていましたが、そのおかげか、大好きなランランランってこんな最初の方にやったんだ!ってびっくりしてがっかりしました(笑)
楽しみは最後の方にとっておきたいタイプです。
うーん。しかしやっぱりランランカルテット(勝手にそう呼んでる)はかわいいなぁ!
ここはマスタングの見せ場なんだけどついついこのかわいい女子4人を見てしまいます。
ランランランラランララランランって声がまたいーんだ。やっぱ女の子がいる舞台は涼やかでいいなぁ!
マスタングがぶっちぎってる間、ラグ、ワーム、ビンゴの戦いも見物なんです。
ビンゴ、すっごい汚い手をつかってたけど!(笑)
体ちっちゃいラグを抱えてぽいって後ろにやっちゃだめでしょー?って、でもそれが龍ちゃんだと思うと「うん」ってなっちゃうんだよね。
別に龍ちゃんが姑息キャラとは思ってないんだけど、そうゆうのが似合うなーと思うのです。
あとほんとにラグがちっちゃいから、ワームの足にしがみついてるのがめっちゃかわいくて!一回でいいからだっこしたーいってなります。

ハンターがやってきてみんなが散り散りに逃げた後のモリー母さんとラグの再会シーンも好きな場面のひとつ。
「かあさん、かあさん」って心細そうなラグの所に、モリー母さんが森の奥から警戒しつつ、少しずつラグに近寄ってくるその仕草がウサギそのもので、毎回「すごいな!」ってなるんですよね。
モリー母さんのビジュアルも好きなんだ。
うみのちかさんが書かれる動物キャラっぽいの。あくどさの中にあるかわいさみたいなのが三次元で現れた感じ。
二幕にもモリー母さんとラグのシーンがあるんだけど、そこもジーンとしちゃう。
親子の愛だけでなく、種族として「生きる」って命題がそこにあるように思います。ってのはちょっと大げさかな。

二幕冒頭はロボと愉快な楽団達。ここはビンゴシンバルでしたね。
佑太くんが持ってる鉄琴縦バージョンって、私幼稚園の頃憧れてたんだよな〜。
一度だけお遊戯会で持つことが出来てとっても嬉しかったのを思い出しました。
レッドラフとブラウニーのシーンも好きな場面の一つ。
恋を歌う二人のかわいらしいこと!
レッドラフの太鼓に答えてタップを踏むブラウニー。
二羽の密やかな会話が聞こえてくるようなんですが、割と乗り気なブラウニーに対して、「えっ?いいの?えっ?」って感じでちょっと煮え切らないレッドラフに今時男子だなーと笑っちゃう。
恋が成就して、わらわら出てくる森の仲間達。冷やかしたり祝福したり、結婚式のまねごとも微笑ましくて。
だから銃声が鳴り響いた時には冷や水を浴びせられたって表現がそのまま当てはまった。
そういえば、この辺でシルバースポットの出番がないまま終わってしまうとか思ったんだったわ。
何故かシルバースポットの出番が一幕だと思い込んでたんだよね。
この後すぐに出てきましたシルバースポット。
「トウッ」って飛び出してくる彼に、「カアッ」じゃないんだとクスリとしてしまう。
佑太くんは天然なのにシルバー隊長の時は凛々しくてステキですね。
この場面はみんな勇ましくて、「がんばれー」なんて思っちゃいます。
本編とは関係ないけど。マスタングのかけっこといい、こんな血湧き肉躍る場面でも子ども達がちゃんと黙って見てる事に感心します。私だったら絶対声出しちゃってるわ〜。
そしてここから一気に佳境。
みんなで力を合わせてハンターを撃退したのも束の間。
翔にせがまれてロボの話が始まります。
ハンターに掴まってしまったビアンカとロボの歌声が切ない。
我が名はロボと愛する者へが絡まり合い響き合い、切々と二人の心情が染み入ります。
前回は妖精さんの登場が唐突過ぎているのかなーなんて思ってしまったんですが、何でもリセットボタン一つで解決できると思い込んでいる翔を強く突き放す存在として彼女の登場はそう不自然ではないのだなと今公演で理解しました。二年越し!
ロボの腕の中で息を引き取ったブランカと、次いで命を落とすロボのシーンはもう涙で視界が悪くてさあ!
おっきなまさしの体が倍にも感じられる大きさで、ぐーっと胸が苦しくなる。
その後の森の仲間達の埋葬(?)の儀式も、すごく神妙な気持ちになります。
悲嘆に暮れるんじゃなく、正しく生き抜いたロボとブランカに敬意を胸に別れを告げる。
そんな風にロボは生きたし、彼らもまた同じように生きているんだって。

翔はこの不思議な体験を通してひとつ大人になったけれど、その時感じた感情ってやっぱり一時のモノなんですよね。
明日になればこの感動は薄れているかも知れない。
一週間後には忘れているかも知れない。
でも、ふとした時に蘇り、そこでまた気を引き締めたり、新に考えたりする。
答えはいつまでたってもでないけど、そうして成長していくしかないんでしょうね。
私はどうかな・・・?二年前に比べたら少し落ち着いた気もするけれど、すーぐ油断するからな(笑)


かなうなら、こういった公演こそ地方でばんばんやってほしい。
子連れで東京まで舞台を観に来ようって中々ならないと思うんですよね。
でも、これは是非たくさんの子ども達に観て欲しい。もちろん大人にも。
実際問題難しいのはさておいて、強く願わずにはいられないのでした。